飼っているクサガメ、ミドリガメ だけが溺れる理由

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

クサガメ、ミドリガメという動物を知らない人はいないくらいメジャーなペットですよね。
ペットの入門種として、小さなお子さんが初めてペットをお迎えする際に選ばれやすいペットでもありま す。
小さなお子さんから、年配の方まで幅広く愛されているペットの1種ではないかと思います。 今回はクサガメ、ミドリガメが溺れる秘密ということでお話ししていきたいと思います。 また、足に穴が開いてしまうこと、ついついやってしまう良くない飼い方もお伝えします。
ミドリガメさんを飼育されているかた、これからミドリガメさんを飼いたいと思っている方は是非とも 最後までご覧ください。

クサガメ、ミドリガメは泳ぎの名手

仮に、初めて遭遇する動物だったとしても、僕らは「足の形状」をみて水の 中で生活している動物だなと判断します。
動物好きのみなさんならお分かりだと思いますが、そうですね!水中で生活 する脊椎動物の足には「水かき」がついています。
なので、クサガメ、ミドリガメさんの足には水かきがついているので、泳ぐの が上手なんですね!なので自然界では溺れて亡くなってしまうなんてことは基 本的には起こらないと推測されます

そうじゃなくても水中でぷかぷかできる

カメさんは、背中に肺があります。 つまり、背中に浮き袋を背負っている状態なんですね!
水の中にいる時、肺に空気があれば自然に浮いた状態になる。ひっくり返し
ても自然と背中が上になるように浮力が生じて元に戻る。
溺れようにも、そう簡単には溺れることができないような構造になってい
る。

じゃあ、なんで溺れるの??

じゃあ、なんで溺れるの??って思いますよね! 原因は、その飼育環境にあります!
自然界では起こり得ない、溺れてしまう危険性のある飼育環境を、飼い主さ
んが知らずに作り上げてしまっている!!
そう考えると、正しい飼育環境をわからずに飼育をスタートするって怖いです よね・・・

溺れてしまう原因

1。水深が浅い
何かの拍子にひっくり返ってしまった時、先ほどお伝えした浮力が生じない
ので、浮かび上がるとか、元に戻るとかが起こらない。
2。水槽の床がツルツル
カメさんはひっくり返った時、足と首を伸ばして元に戻る術を持っている。 でも、浮力があまり生じない環境でかつ飼育水槽の床(足や首がつく場所) がツルツルだと摩擦が生じないので、足も首も滑って元に戻れない。

解決策は?

非常に簡単で、カメさんが浮かび上がることができる深さの水を入れるこ
と!

水深が浅いとおこる問題はそれだけではない!

1。足の裏がボロボロになる
通常は浮力がある場所にいるカメさん。浮いているので自分の足は自分の体 重を支えていない(僕らと違う)。長時間、自分の体重を支えるような強度 の皮膚の構造ではない(足の裏を触ってみるとわかるが柔らかい)。
水深が浅いと、浮力がないので、長時間自分の体重を支えていることになり、 足の裏がボロボロになって、やがては穴が空いてしまう。
2。水面より上の甲羅は白く変色したり、甲羅の成長や脱皮がうまくいかない
甲羅は、水にいる時間と乾燥する時間のバランスで正常な状態を維持でき
る。そのバランスが崩れるとこういったことが起こる。
ちゃんと、甲羅の上の方まで水の中に浸かれる深さが必要。(日光浴も必要
だよ)

まとめ

クサガメ、ミドリガメは泳ぐのが上手な上に、浮力が生じる構造なため、溺
れることが基本的にはない
しかしながら、人工的な飼育環境では水深を浅くしたり、滑りやすい飼育水
槽で飼育されているため、ひっくり返った時に元に戻れない構造を作ってし
まっていることが、溺れてしまう原因
解決策としては、浮力が生じる、潜れる深さの水深で飼育すること。

補足

どうして、水を浅くするのか、どうして床材などを入れずツルツルの水槽にしてしまうのか? 答えは、おそらく、その方が管理が楽だから。
定期的に水換えが必要。カメさんの体が大きくなるにつれて、水槽の大きさが大きくなる。そうすると、入れる水の量も増え る。水換えが重労働になる。掃除も大変・・・水の量減らしてもいいんじゃない??その方が楽だし・・・ってなります。
このカメさんにこれぐらいの水深がどうして必要なのか?知らないから、人間の都合の良い方に解釈して寄せて行ってしまう。
水の量を減らしても、そんなにすぐには異常は見られません。時間をかけて徐々に悪くなっていきます。ご飯も食べるし、元気 だし。だから気づかない!水を減らしたら、次の日にはご飯食べなくなりました、みたいにすぐに異常が結果として返ってくる のならダメだって気付きやすいけど、ゆっくりだとわからないですよね。
こんな、偉そうにお話ししていますがこういったことはこの仕事をする前は当然知りませんでしたし、本を読んだり、自分で飼 育したり、診察することで分かったことなので、 是非とも、みなさんで共有したいなと思いお話しさせていただきました。