ヒョウモントカゲモドキの手術の 治療と経過

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約500羽ほどのトカゲさんを診療しています。
今回は、ヒョウモントカゲモドキさんの卵胞鬱滞という病気の治療と経過についてお伝えしたいと思います。
トカゲさんも手術するんですか!?って思われた方も多いのではないかと思いますが、実際には必要性があれば普 通に手術します。
この病気、ヒョウモントカゲモドキさんのメスを飼育されているかたは、経験されることが多いのかなと思います。
飼い主さんの気持ちや獣医師の本音とかもちょこちょこ入れてあります。飼い主さんのご好意で動画にさせていた だくことの了承を得ることができましたので今回お話しさせていただきます。
ヒョウモントカゲもどきのメスを飼育されている方は、是非とも最後までご覧ください。

動物の紹介

ヒョウモントカゲモドキさん、女の子、年齢
ご飯を食べない期間が1ヶ月以上続いているとのことで来院されました。
いくつか動物病院を探されたと思われますが、近くの動物病院では診察するのは難しく、お隣の県から当院まで受診されました。
レントゲン検査とエコー検査をしたところ、卵巣に「卵胞」という卵の素になるようなものが多数ありました。
総合的に判断して、卵胞鬱滞という病気と診断しました。
1年ほど前に、同じ病気になってしまったものの、その時はリュープリンというホルモン剤の注射で1週間ほどでご飯を食べる用に なって改善しています。
今回、また同じ病気になってしまったため、同じ治療を実施しました。 しかしながら、今回は改善がみられず、相談した結果、手術をすることになりました。 このままだと、お腹の中でその「卵胞」が腐ってしまい、腹膜炎という病気を発症するリスクがあります でも手術にもリスクがあって、一番心配されるのは、麻酔のリスクです。最悪、亡くなってしまうかもしれません。

麻酔して寝ている

ヒョウモントカゲもどきさんの手術では、最初に眠くなる注射を打って寝ても
らいます。
その後、ガス麻酔へと移行して行きます。 手術の方法としては、犬や猫の避妊手術と似たような感じになります。 卵巣と卵管(犬や猫では子宮)を摘出して終了となります。 今回は卵管に卵があったのでそれも一緒に摘出してあります。
実際の手術の写真は載せませんが、その時の様子と手術後に摘出した卵の写真 だけ、載せておきます。

手術後の様子

手術後の様子です。
傷跡が痛々しいですね。
まだ、麻酔を切ったばかりなので、眠そうです。
当院では通常は、手術後の麻酔の醒め具合や全身状態に問題なければ当日退院とし ています。そのほうが、ストレスも少なく過ごせると思います。
退院時は、まだ動きはゆっくりですが、概ね普通に動くことはできます。 このままで大丈夫かなと感じていましたが今回はトラブルがありました。そのこと

手術後1週間の様子

退院してしばらくして、脱皮が始まってしまい、傷が開いたかもしれないとの 連絡がありました。
爬虫類は脱皮をする動物なんですが、手術後に脱皮をすると、お腹を縫った 糸ごと、脱皮で剥がれ落ちてしまったり、脱皮のときに脱皮の皮ごと食べて しまうので、その時に縫ったところごと引きちぎってしまうことがあります。
残念ながら、脱皮の時に縫ったところごと引きちぎってしまい、手術した場
所の一部が開いてしまいました。
再度、鎮静処置をしてその場所だけ縫合しなおしました。

さらに1週間後

その時の写真と動画です。
傷は綺麗に治って、一部、脱皮の皮が縫合した場所にくっついているだけにな りました。
経過も良好で、手術後2、3日でご飯を食べてくれるようになりました。
後は、脱皮を繰り返すうちに、綺麗に剥がれ落ちてくれると思いますので、 縫ったところはまだ、くっついていますが、様子を見ても大丈夫そうです。
途中で傷が一部開いたことで飼い主さんも不安な思いをされたと思います
が、これで治療終了となったことで安堵されてました。

卵胞鬱滞

卵胞鬱滞とは、卵巣に卵胞という卵の素になるものが作られて、本来ならそのまま排卵されるはずが、
何らの理由で排卵されずにとどまっている状態。
原因は不明
ストレス、ホルモンバランスの問題、飼育環境の問題などが言われている
症状:お腹が腫れている、食欲不振、時に元気ない
診断は症状とエコー検査など
治療は内科的治療(リュープリンやカルシウム剤の注射など)と外科的治療(卵巣・卵管摘出)があ る。
内科的治療では必ず治るわけではなく、良くなることもあれば改善ない場合もある。また再発すること
も多い。外科的治療では麻酔のリスクはあるけど、基本的には再発はなく完治が期待できるが、繁殖を
目的としている場合は判断が難しい。

補足

トカゲも手術するんだ~って思った方も多いのではないかと思いますが、この手術の適応に関してはいつも 悩んでいます。
というのも、そのまま様子を見たら普通に産卵してくれるかもしれないパターンや、作られた卵胞が吸収さ れて無くなって症状が自然と治ってしまうパターンとあるからです。
ご飯食べないけど、元気っていうパターンが多く、そのまま様子を見てもいいこともあるので、難しいで す。
ただ、よくならないパターンでは、そのまま放置してしまうと、お腹の中で卵胞が腐って来てしまうので、 そうすると腹膜炎という命に関わる状態になってしまうので、そうなる前に手術をする必要があります。
後、人間ではあり得ないのですが、縫合した糸ごと、脱皮で取れてしまうことが起こるのが厄介です。どう しようもないのですけど・・・

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