ヒョウモントカゲモドキで多い病気6選

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約500匹ほどトカゲさんを診療しています。
その中でもここ数年で、ペットとしての地位を確立したトカゲとしてヒョウモントカゲモドキ、レオパードゲッコー、同じも のですが、来院頭数が増えており、爬虫類の中でも女性も含め幅広く飼育されているトカゲの1種ではないかと思います。
爬虫類の中では特に丈夫で飼いやすい。表情も豊で可愛く手頃な大きさで成長が止まる、色のバリエーションも豊富で、人工 繁殖されて安定した流通量。フードが本来は昆虫ではありますが、人工飼料も確立しており、その点もペットとして飼育する 方が増えている要因だと思います。
しかしながら、ペットとしての歴史が浅く、どのような病気があるのか、まだまだわかっていないのが現状ではありますが、 日常診療していく中で遭遇する機会の多い病気についてお話ししたいと思います。
これからヒョウモントカゲモドキをお迎えしたいなと思っていらっしゃる方、すでにヒョウモントカゲモドキをペットとして 飼育されていらっしゃる方は是非とも最後までご覧ください。

1 脱皮不全

脱皮した皮が新しい皮膚に張り付いて取れなくなってしまう病気
【原因】
不適切な飼育環境(たいていは過度な乾燥または湿度高すぎ、大体50%程度を基本だが状況によって)、保温器具による火傷(図3)
脱皮が始まると、体全体が白くなる。その時に体に霧吹きなどをして過度に湿度を上げてしまうと張り付いて脱皮不全になることも。
脱皮不全自体でなくなってしまうことはないけど、指の先端などが壊死してなくなってしまうことはよくある
火傷の原因はシェルターにパネルヒーターを敷いている場合、トカゲとの距離が近すぎて低温やけどになってしまうパターン。パネルヒーターをシェルタ ーに敷かないか、厚手の床材で距離をとる(離しすぎてもだめ)。そもそも寒くてパネルヒーターで体温を上げようとするしかない温度設定に問題あり。
【治療】
残った脱皮の破片(それが残ってしまうと、指の先端やしっぽだと壊死したり、脱皮の皮がミルフィーゆのように重なって余計に取れなくなる)を取り除 く。なんとかして。
とりあえず、残った脱皮の破片はふやかして無理なくピンセットなどで取り除く。難しい場合は無理なく、お近くの動物病院へ
脱皮不全は、飼育環境が不適切で体調が悪くなっているサイン!何がおかしいか、よく観察して飼育書などを見て改善するか専門家に相談。

2 代謝性骨疾患

(どんな病気か)カルシウムが不足して起こる病気
【原因】
カルシウムを添加していない食事。紫外線不足。特にカルシウムが要求される成長期やメスで産卵時に症状が出る ことが多い。肝臓や腎臓が悪い場合も起こる
【症状】 骨の変形(四肢、背骨、あご)(図5)骨折することも元気食欲低下、ひどいと痙攣、なくなってしまうことも
【治療】
カルシウムの添加、紫外線浴びる、ビタミンD、これまでは夜行性のトカゲは紫外線不要と言われていますが、実 際に診療する中でカルシウムを与えているのにこの病気になる個体も遭遇するし、夜行性でも太陽光を浴びている というそういった報告もあるので、紫外線は浴びたほうがいいと思っています。

3 腸閉塞

(どんな病気か)異物、特に、床材を食べすぎて、胃や腸で詰まってしまう(図6)
【原因】砂などの床材を誤って食べてしまう。カルシウムなどのミネラル不足で自発的に床 材を食べてすぎて詰まる。自分の排泄物の匂いがついた床材を空腹時に食べてしまうこと も。生き餌の場合、追いかけて一緒に食べてしまう。ゲル状の人工飼料の場合、大きいと一 度落として床材がまぶされたものを一緒に食べてしまう。寄生虫が多数いる場合閉塞するこ とも。
【症状】ご飯食べない。吐き戻し、便が出ない 【治療】手術。食べた砂の量が少なければ水分摂取で排泄されることも。 床材をキッチンペーパーなど食べることのできない大きさのものにする。

4 クリプトスポリジウム

(どんな病気か)寄生虫の感染による下痢と嘔吐でガリガリに
【原因】:ブリーダーで親や他の個体から感染してしまう
【症状】痩せてくる。(尻尾が細くなる)骨と皮だけに・・・。腹水も溜まったり。下痢 や嘔吐や未消化便がひどいと元気食欲が低下して、発見が遅れるとなくなってしまう。
感染していても症状を示さないこともあり、ストレスなど免疫力低下で発症する
【治療】
完治は難しい。駆虫剤を飲んで付き合っていく。(一時的には回復するがやめると再発する感じ)

5 卵胞鬱滞(らんぽううったい)

(どんな病気か)メス限定の病気。卵巣に卵のもとなるものができて、それが 排卵されずそのままとど待ってしまう
【原因】不明。ストレスなどによるホルモン異常など?
【症状】何もない場合も。元気はあるけど食欲低下から廃絶。感染を起こした
り、ねじれたり、変なところに排卵すると状態が悪くなり、急変することも
【治療】
ホルモン剤の投与、卵巣摘出手術

6ヘミペニスプラグ

(どんな病気か)雄限定の病気でペニスに分泌物が固まったものが詰まってしまう
【症状】
ペニスが収納されている場所が腫れてくる
気にしてその場所を舐める
【原因】
ヘミペニスでの感染など。性交渉をしないから?
【治療】 詰まっているものを取り出す。感染を起こしている場合は抗生剤の内服

それでは今日のお話をまとめます

1脱皮不全:
湿度を適切に、火傷しないように室温全体を保温

2代謝性骨疾患:
カルシウムをとって、夜行性だけど紫外線も浴びてね

3腸閉塞:
床材を食べてしまう。キッチンペーパーなどシンプルなものおすすめ

4クリプトスポリジウム:
感染すると完治は難しい。他の子へウツサナイデ。

5卵胞鬱滞:

メスでお腹膨らんできてご飯食べなくなったら注意 6ヘミペニスプラグ:雄でペニスのあるところが膨らんできたら注意

補足

やはり、ヒョウモントカゲモドキの病気も、飼育環境の問題で起こる病気が多かったのではないでしょうか。脱皮 不全(火傷も)代謝性骨疾患、床材を食べてしまっての腸閉塞、つまり自然界では発生しない、人為的に作ってい る病気が残念ながら多いということが言えそうです。
これらの病気の予防法に関しては、以前の動画であげてある、「ヒョウモントカゲもどきを飼う前に知っておくべ き8つのこと」も一緒にご覧いただければ幸いです。
あとは、クリプトスポリジウム感染症は、いくつもブリーダーを壊滅的ダメージを与えてきた寄生虫ですが、最初 は症状がでず、周りに撒き散らしてから宿主もダメージを与えて、しかも治らないという病気です。ヒョウモント カゲモドキは数匹で飼育されている肩が多いので、お迎えしたこが、他の個体にウツサナイようにちゃんと検査が必要。
今回、挙げませんでしたが、肥満も多いです。太りすぎて脂肪肝という病気も心配ですが、お腹の中の脂肪が腹筋 を突き破って穴が開いてしまう腹壁ヘルニアという病気が起こることもあるので(人間ではあり得ませんが、ヒョ ウモントカゲもどきではちょこちょこ起こるようです)、ご飯の与えすぎにご注意くださいね。

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