ハムスターの腫瘍切除 治療の経過と記録 ドキュメンタリー

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約1000匹ほどのハムスターさんを診療しています。
今日は、「治療と経過の記録」とありますが、ハムスターさんで起こってしまったお 腹にできた腫瘍の切除手術の実際についてお伝えしたいと思います。
ご来院いただいております飼い主さんの許可をいただきました。そのご協力もありま して、治療の経過もお伝えすることができました。
獣医師の本音、どう考えているかなどの生の声をお届けできればと思います。

ハムスターさんの紹介

年齢ははっきりとはわからないとのことですが、1歳ぐらいののジャンガリア ンハムスターさん、女の子
隣の県から遠路はるばるご来院いただきました。
その県ではハムスターさんの手術に対応してくれる動物病院が見つからない とのことで、かなり探されたんだと思います。
ようやく見つかった・・。そんな苦労を感じました。

実際のお腹の腫瘍の写真

実際に診察してみると、左の胸のあたりに一円玉ぐらいの、ハムスターさん
にとってはかなり大きな出来物がありました。
ハムスターさんにとっては頭の大きさぐらいのもの。人間にしたら、自分の
頭の大きさと同じぐらいのものがお腹にぶら下がっている。
歩くのだけでもかなり大変だと思います。
ハムスターさんは僕らで言う、匍匐前進をしながら歩行するようなものです。 こんな大きなものを引きずって歩いていると、擦れて出血してしまいます。
また、気にして齧ってしまったりします。

手術前の検査

40gぐらいの小さな動物なので、犬やネコほど、血液検査などで細かく手術のリ スクを評価することは困難です。
検査のための採血だけで貧血になりそうです。
聴診や触診、場合によってはエコー検査などで病気が隠れていないか、確認した
りしますが、全部のリスクを炙り出すことができるわけではありません。
不透明なリスクがある中で手術に臨みます。100%安全という手術はありませ ん。
まだまだ、こういった動物では数少ない検査と、経験と勘に近いものでリスクを 評価して、リスクが高くないと判断したら手術に臨みます。

手術の写真

実際に麻酔にかかる前の写真です。ハムスターさんにとっては初めてのものなので、不安でいっぱいだ と思います。手術前には痛み止めなどを注射で打っておきます。
酸素と麻酔薬を混ぜたガスの中にいます。
5分ぐらいで寝てくれますので、バリカンで毛刈りしてそのあと、手術する場所を消毒して手術です。
手術中の写真は痛々しいので載せません。
飼い主さんは現場にはいません。
小さい動物の手術なので、神経を使います。でも、これぐらいのものだと手術時間は約30分かかりませ ん。案外短いと思った方も多いかもしれません。
固着と言いまして、腫瘍とその下の組織がガッチリとくっついていない場合は比較的簡単に取れます。 切除した後、正常な皮膚同士を縫合して終了です。歩き方とかに不都合が出にくいように

当院では日帰り手術

これも意外かもしれませんが、日帰り手術です 午前中にご来院いただいて、検査して、お昼に手術、夕方には帰宅できます。 痛み止めや抗生剤などのお薬をご自宅で飲んで過ごしてもらいます。 こちらは1週間後の動画です。すごく元気な状態で会いにきてくれました。

1週間後の経過での来院

ハムスターさんなら、1週間ぐらいで傷がほとんどくっついてしまいます。
ご覧のように多少瘡蓋がありますが、綺麗にくっついてくれました。
当院では抜糸が不要になるように、とける糸を使用しています。
性格によっては齧ってしまうケースもありますが、大丈夫なケースの方が多いです。
傷が綺麗なら、これで終了です!
隣の県からの来院で、初めましてだったにも関わらず、僕を信頼してハムスターさんの命を預け てくれた、僕としてもそれに応えたいという思いで手術に臨みました。
今回の結果を踏まえてすごく喜んでくれて僕も嬉しくなりました。

ハムスターさんの皮膚にできる腫瘍について

実際にジャンガリアンハムスターさんでは、お腹の皮膚にできる腫瘍がとても 多いです。
1歳前後の年齢で腫瘍ができてきます。
平均的な寿命が1年半ぐらいなので、腫瘍を切除するかどうかなかなか悩まれ る方も多いですし、僕らも本当に悩みます。
答えがないようなものなので、とった方がいいのか、取らない方が案外長生 きするかもしれませんし、麻酔のリスク、手術のリスクを天秤にかけて、飼い 主さんと一緒に相談しながら決めます。

皮膚の腫瘍の種類

切除できるものとそうじゃないものがあります。
今回の腫瘍のように切除できるものや転移がないものなら手術が適応になり
ます。
手術が適応になるかどうかの検査の一つとして、針で腫瘍を指して少しだけ細 胞を取ってきてみる検査、細胞診というのを行います。
乳腺腫瘍や扁平上皮癌、リンパ腫や乳頭腫などいろんな腫瘍があります。

補足

ハムスターさんは腫瘍発生を調べるための実験動物としても有名な動物です。
なので、そもそもが腫瘍が発生しやすい体質が背景にあるのかもしれません。
犬やねこや人間みたいに、抗がん剤などの治療がないのでできる治療の選択肢 が限られるのが現状です。
特にお腹にできる腫瘍は、飼い主さんから見えない場所にあるので、普段から 触っていないと早期発見しづらいです。ハムスターさんの体と同じ大きさにま で大きくなる場合もあります。そうすると、手術も大変になります。
是非とも、普段から触れ合って、早期発見早期治療をお願いします。

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