ウサギの不正咬合

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約1500羽ほどのウサギさんを診療しています。 今回は、ウサギの「不正咬合」という病気についてお伝えしたいと思います。
今日のお話を知っておくだけで、不正咬合の実際について少し理解が深まるとは思い
ます。
ネットでまことしやかに囁かれている、無駄に恐怖を煽る内容に戦々恐々とされてい
る方、現在、治療中の方は、是非とも最後までご覧ください。

初めに

私自身うさぎをこれまで、2羽飼っていたことがあります。 いわゆるミニうさぎと言われる、ミックすとネザーランドです。
飼い主さんとしての気持ちも、その家族としての可愛さもわかりますし、獣医師と して治療する側の気持ちもわかるようになりました。
今日はその両方の立場から伝えたいと思います。
獣医師も人間ですので、あってはならないことではありますが、失敗することもあ るし、病院の方針というのもあります。
なかなか言いにくいこともあるのですが、その立場を踏まえて聞いていただければ と思います。

不正咬合とは以前の動画でもあったようにおさらい

読んで字のごとく、歯の噛み合わせがずれてしまう病気
歯が伸びすぎて、ちゃんと食べられなかったり、頬に突き刺さったり、痛く て何も食べられなくなったりして、見ていてもとてもかわいそうな病気です。
ここまでは以前の動画でも話しました。
今日はその不正咬合について少し詳しく掘り下げて、知ってもらいたいと思い ます。

ウサギの歯について:人間との違い

3つ違いがあります。 一つ目:生涯にわたって歯が伸び続ける
ウサギの歯は前歯も奥歯も全部、生涯にわたってのび続ける歯(常生歯)なのですが、ご飯を噛み噛みするときに、石臼で粉を 引く時のように、奥歯で草をすり潰して、唾液と混ぜながら粉々のドロドロにします。その際に奥歯が草と一緒に自然と削れてち ょうどいい長さにたもたれています。
僕らでいう、爪と同じ感じで根本は血流があるけど、途中から血流がなくなって、切断しても出血もなければ痛みもありませ ん。なので、歯がすり減っても途中で折れてもうさぎさんは痛みがない。(ご飯を食べるたびに歯軋りして食べてるようなものな のですり減って痛みが出たらご飯も食べれない!)
二つ目:歯の本数も違います。 上の歯は片側で前歯2本と奥歯6本。下の歯は前歯1本、奥歯5本
うさぎは犬歯がない。
3つ目:顎の動かし方が異なる
前歯は僕らと同じ上下に動かしてかむが、奥歯はそれとは異なり、左右にも動かしている

前歯と奥歯での不正咬合の原因が異なる

前歯:金網や金属の格子状のケージなどを齧って、歯の根本が曲がってきて しまう(写真1)前歯は口中に入ることのできる大きさに食べ物を小さく噛み 切るための歯、その本来のかむ強度を超えた硬いものかみ続けることでずれ てくる。
奥歯:ペレットと中心としたご飯で、噛み合わせがずれてきます。牧草を食べ た時の歯の動かしかたとペレットを食べた時の動かし方が異なる。それが続 いて自然界のウサギ本来の噛み方ができないことで起こる
いずれも徐々に歯の生えてくる角度がずれてきてしまう。

不正咬合になってしまったら

一番は不正咬合にならないことです。しかし、なってしまったら仕方がない。誰もが病気にさせたいわけじゃないです。かわいいう さぎちゃんのために精一杯できることをしてあげてほしいです。
今回は不正咬合についていただいた疑問点などにお答えしながらお伝えしたいと思います。 【カットの頻度】
大体1ヶ月に一回程度、定期的に切っています。伸びると頬に突き刺さるから。奥歯が特に。前歯だと上顎や、下顎につき刺さ ります。奥歯に関してはのびた歯が頬や舌に突き刺さる→ひどい口内炎!(写真)
治療しない限りは、ご飯食べるたびに口内炎をより一層えぐる! のびた歯は頬のみならず、顎の骨を変形させる方向にものびていく(レントゲン写真正常な写真との比較)
牧草を食べることができるようになってきたりすると、カットの頻度が伸びていくうさぎさんもいます。治っちゃうこも稀にいま す。
痛そうにする前にカットしてあげたいね。ご飯を食べたそうなんだけど、痛くて食べるのを躊躇することが多い。これも見ていて かわいそうですね。特に奥歯の不正咬合になってしまうとご飯を食べることができなくなるケースが多い。
その結果糞便も小さくなります。症状として判別することもあるので、糞便が小さかったら、不正咬合ではないかチェックしてあげ てください。

不正咬合の治療で麻酔をするかどうか?

歯のカットで麻酔をするかどうかについてです。 当院では両方できます。麻酔してのカットも、麻酔なしでのカットも。
麻酔しなくてもカットできる状態であれば麻酔せずにカットしていますしています。 理由としては、麻酔自体が負担であること、麻酔をしなくても歯を切ることができる うさぎさんがほとんどだからです。費用面でも麻酔代が加算されてしまうので、飼い 主さんの負担が大きくなってしまいます。
1ヶ月に一回、毎回麻酔して、歯をカットする負担を考えた時、そのデメリットをメ リットが上回る時のみ、麻酔をします。
具体的には、デメリット(麻酔の負担、飼い主さんへの費用負担)、メリット(麻酔 をしたほうが安全に歯をカットできる状態)を考えて処置をします。
目に症状が出ることも多い。初期では、涙目になるとか。
ひどくなると、涎が多くなる(下顎がべちょべちょ)口の中が痛くて唾液が
出てくる
歯の根っこに感染を起こすと、膿が溜まってくるのびた歯が口の中の粘膜に刺さることも(写真)
奥歯に関してはのびた歯が頬や舌に突き刺さる→ひどい口内炎!(写真) 治療しない限りは、ご飯食べるたびに口内炎をより一層えぐる!
のびた歯は頬のみならず、顎の骨を変形させる方向にものびていく(レントゲ ン写真正常な写真との比較)

やがては・・・

顎に膿が溜まってくる→切開して膿を定期的に出すことも
下顎の骨がボコボコになってくる→これも治らない・・・痛みのコントロール が必要かも

まとめ

不正咬合という病気は歯の噛み合わせがずれてしまう病気
前歯はケージなどを齧った結果として、奥歯はペレット中心のご飯を食べ続
けてなる
主な症状は、食欲の低下、よだれ、下顎が腫れてくるなど
治療は定期的にのびた歯をカットする。カットする本数や頻度はまちまち。
完治は困難で生涯にわたって治療が必要になるが、牧草を十分に食べること ができるようになった場合、歯を切る処置が不要になった理、頻度がのびる ケースもある。

補足

歯をきる処置に関して、麻酔をするかどうかは現在のところ、病院によってまちまち!
人間の場合は、麻酔をしないとできないくらい強い痛みがある治療をする場合は、麻酔をする
動物の場合は、それに加えて、処置に痛みがなくても大人しくしてくれないとできない検査や処置をする場合麻酔をする
かつて、歯の処置を無麻酔でした結果、顎の骨が折れてご飯を食べれなくなってなくなってしまったうさぎさんが、他の病院で ありました。
無麻酔で処置をした病院側のミスなのかどうか、裁判となってしまいました。
これだけ聞くと、無麻酔がダメだったように見えてしまいますが、そうじゃないと思っています。無麻酔でうさぎの歯の治療をし ている病院も多いですし、それで問題なく過ごせているうさぎさんも多いと思います。
歯を切っても出血はしないですし、痛みはおそらくないのではないかと思います。爪を切るような感じでしょうか。なので、事故 を起こさなように安全に保定することができるか、その結果、安全に歯をカットできるかどうか、はたまた、麻酔の技術の方が 高いのかどうか、その病院の得意な技術、熟練度と言いますかそれが、その処置の安全性と関係しているのかなと思っています。
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