インコやオウム、そして「私」が 幸せに暮らすための「社会化」

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約5000羽ほどの鳥さんを診療しています。
今日は、インコとオウムの社会化についてお話したいと思います。
「社会化」ちょっと聴き慣れない言葉かもしれませんが、簡単にいうと「環境の変化に対して慣れてもらう練習」みたいな感じで しょうか
どうして社会化が重要なのか?結論からいいますと、これはみなさんの有事の際、愛鳥さんの命が助かるかどうかを大きく左右す るからです。
今回の内容も非常に重要なことで、インコやオウムをお迎えされている方にとって興味深い内容だと思いますので、是非とも最後ま でご覧ください。

1。社会化ってこんなこと

人間社会でうまく生きていくために必要なことを教えること!
インコやオウムにはそもそも備わった本能行動がある。例えば、知らないもの には近づかない、大きな物音は危険なサインかも!?とりあえずその場から離 れる!周りには危険な動物がいっぱい、動くものには近づくな!などなど
そのまんま備わったシステムのままだと、人間社会では行きづらい。無駄に恐 怖の連続・・・このままだとうまくいかないから長い生涯のことを考えて、い ろんな環境の変化に対して慣れてもらう(安全だよってことを知ってもらう) 練習を重ねていく

2。社会化不足の弊害

じゃあ、社会化ができていないとどうなるの?こんな鳥さんになっちゃうよ 過度な恐怖心:ちょっと動いただけでパニック 突発的な攻撃性:とりあえず最初から噛みつくよ!! 鳴り止まない呼びなき、叫び声:御近所迷惑でこれ以上飼えない 幅の狭い食性:ひまわりしか食べません! 一人遊びができない:飼い主さんがいないと泣き喚く、自分の体をかじる というように人間との共存が難しい鳥さんになってしまいます。

3。早期社会化をしよう

なるべく早期に社会化を進めていく目的
人間では幼少期からの五感に訴える環境刺激が多ければ多いほど、脳の中で多くのシナプスを作る。その時期に刺激を受けなかったシナプスは「不要」と判断されなくなってしまう。
鳥で同じことが言えるかは証明はされていないが、同じようなことが起こっていると考えられている。
また、いろいろなものを受け入れることができる「柔軟性・順応性」は幼少期の方が高い。
歳を重ねるごとにすでに定着した考えがあると、新しいものの受け入れを邪魔することがある。

4。どう言う時に役立つの?

いろんな場面で役立つ!けど、今回は獣医師という立場でお伝えします。題して「やっとけばよかった社会化」
1。入院の時に役立つ!
状態が悪くて入院が必要です!ってなった時、社会化を全くしていなかった場合。入院室という普段と違う環境で、絶対的味方である飼い主さんが いない・・・不安と恐怖。注射や流動食の給餌、投薬などストレスに耐えられるだろうか・・・。僕も不安。ストレス耐性が低すぎて治療内容が制 限される。元気になっているはずなのに、ご飯を食べない。。。この治療で大丈夫なのかな?他に問題あるのかな?
2。ホテルの時に役に立つ!
飼い主さんの方が長期間入院が必要。他に預けることができる人いないし、ペットホテル利用しようかしら・・・でも私以外に慣れていないし、大 丈夫かな・・・案の定、ペットホテル先で全くご飯食べない。このままじゃ餓死してしまう・・・弱ってきていますがどうしますか??
例え話ですが、僕らでいえば、地球外生命体にさらわれて、UFOの中で檻の中で1人、見たこともない生物に囲まれている。言葉も通じない。逃げる こともできない。実験体として使われる?生命の危機。そんな中でご飯が喉を通るわけないですよね?
例:いろんな「もの」に対して慣れてもらう。おもちゃなど 例:いろんな「場所」に行ってみて慣れてもらう。車で移動とか、病院に行くとか、ペットホテルにいくいとか 例:いろんな「人」に会ってみる。飼い主さんの友達、病院の先生とか

5。今からでも遅くない社会化!

一番いいのは、知識と経験を持ったブリーダーによる早期社会化が理想 でも、現状ではなかなか難しい・・・
大人になってからでも、すでに問題行動が見られていても軽減することはできる かも!
優れた動物コンサルタントに相談してみる。 インターネットや書籍を探してみる 概要欄にURLにを貼っておきます。

6。当院のでの試み

来院いただくだけで、おやつがもらえる!(アレルギーとかの関係で持参して ね)
今日は、なにも嫌なことがない!おやつをもらえるだけで帰宅! なんなら、車の中でもおやつ なんなら、病院へ行く時のキャリーケースがおやつだらけ
病院は病気じゃないとこない!と言うのがだめ!毎回嫌なことをする怖い場 所が定着しているけど、基本的にはそうじゃないよ!って覚えてもらう。

補足

みなさん、どうでしたでしょうか?
なるべく早い段階での社会化がどうして重要なのかがお分かりいただけたと思います。「なるべく早め」っていつからなの?って質問が来そうな ので、もう少し具体的にお伝えしますと、お母さんからのご飯をもらっているような雛の段階が終わる頃からでしょうか。
100%お母さんからご飯をもらっている雛の段階で隔離してまでの社会化はお勧めできません。
雛でなるべく早くお迎えして、手乗りにしたい!一番可愛い時期を一緒に過ごしたい!って言う要望が多いのが日本の現状だとは思います。ここ で弊害のある社会化が起こります、具体的には、お母さんの愛情が必要な段階にもかかわらず、人工的な飼育環境下で挿餌を1日に数回だけされる だけという社会化が起こります。
マウスの実験にはなりますが、数時間お母さんから離され、人工的にネグレクト状態を作った子供マウスは、そうじゃない子供マウスと比較して ストレス状況下でも不安になりやすい、つまりストレス耐性が低かったという報告があります。
また、数分単位の短時間の母子隔離であれば、ずっと一緒にいた子供マウスとストレス耐性に差がなかったと報告されています。 残念ながら、どんなに甲斐甲斐しくお世話をしたとしても、精神面においてその雛の本当の母鳥の代わりを、人が担うことは困難だと思います。
これらのことからまとめると、早期の社会化は重要だけど、お母さんからご飯をもらっているような雛の段階ではなるべく一緒に過ごしてもら い、それと並行して1日数回、数分程度の人間と触れ合とか少しのご飯をもらう程度の社会化をしていくのがいいのかなと思います。

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