インコやオウム、そして「私」が幸せ に暮らすための「フォレイジング」

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約5000羽ほどの鳥さんを診療しています。
今日は、インコとオウムのフォレイジングについてお話したいと思います。
「フォレイジング」ちょっと聴き慣れない言葉かもしれませんが、日本語でいうと「ご飯を探し求めること」ってことです。
どうして「フォレイジング」が重要なのか?結論からいいますと、これはフォレイジングをできるようになれば、発情のコントロールや、毛引きや 自咬症などの問題行動の抑制に効果があるからなんですね!
当院でも来院される鳥さんで発情に関する相談や、毛引きや自咬症に関する相談は全体数からいっても非常に多いです。おそらく、知能が高いが故 に、単にご飯を与えて、鳥籠で生活するだけっていうのでは、鳥としての精神的な活動が満たされないのだと思います。
今回の内容も非常に重要なことで、インコやオウムをお迎えされている方にとって興味深い内容だと思いますので、是非とも最後までご覧くださ い。

1。フォレイジングってこんなこと!

動画を二つ用意しましたので、まずは一つ目の動画をご覧いただいた方が早いかもしれませんので、こちらをご覧ください。 ご飯を探す行動!ですが、もう少しわかるように言えば、わざと試練を課して食べる喜び、ご飯を得る喜びを演出する。
自然界のボウシインコでは1日の4-6時間をご飯を探し求め、食べる時間に当てている。すごい頑張ってようやく、やっとそ の日1日をやり過ごすことができるご飯を獲得する。そのご飯は価値あるものになる
他の鳥でも報告があるけど、基本的には暗くなると活動を停止して休んだりしてじっと過ごす。ということは起きている時間 の約半分以上はご飯を食べることに時間を使っていることになる
でも、実際、ご自宅の鳥籠のインコ・オウムさんのご飯はどうやって与えていますか??いつでも好きな時に好きなだけご飯 にありつける環境になっていませんか?ものの数分でご飯を食べ終わっていませんか?
残った時間、限られた鳥籠という空間、おうちのインコやオウムさんはどうやって何をして過ごせばいいの??言葉を選ばず に言えば、「すげー暇!」
そんな毎日の繰り返し、私たちだったら気が狂いそうになりませんか?

2。すげー暇だとどうなるの?

答え:刺激を求めたりする(正確には自分にとって意味のある何かをしだす)
肥満に関する動画で以前お話ししました、、、お腹いっぱいなのにすることが
ない、目の前にご飯があったらどうなる?ポテトチップの例
毛引きや自分の体を齧ってしまう行動と関連がある。自分のはねを引っこ抜く
や壊す行為は、おそらく、僕らの感覚で言えば、梱包材のエアクッションをプ
チプチと潰す感覚や、全部つぶした達成感なんかと似ている?
肥満とも関連があるけど、ご飯をいっぱい食べた結果発情しやすくなる。

3。なんでご飯を得る喜びを演出する必要があるの??

努力せずに、ご飯を得られればそれでいいじゃん!! 楽してご飯にありつける、これ以上幸せなことってないでしょ!?
なんで、愛鳥さんにそんな苦労をさせてまでご飯を得る努力をさせないといけないの? かわいそうんじゃん!
フォレイジングってこんなこと!の内容でこのような疑問を抱いた方、人間を除いては 違うんです!あなたは、人間の物差しで動物のことを当て嵌めようとしすぎています!
是非とも、次の「コントラフリーローディング」というものを知っていただくと、意識 が180度変わるのではないかと思いますので、紹介しますね。

4。コントラフリーローディングとは?

1967年、グレン・ジャンセンという人が報告。
ネズミとレバーの学習実験が元になっています。
最初に、ケージで飼育しているネズミに、レバーを引くと餌が出てくることを学習させる。
それができるようになったら、その隣にいつでも自由に餌を食べられるようにお皿に餌を入れておく。
そうすると、苦労せずに餌を得ることができる環境にしたにもかかわらず、多くのネズミがレバー をわざわざ引きにいった。
ネズミたちは、苦労せずに手に入る餌よりも、わざわざ手間をかけて得られる餌の方に価値を見出した。
人間も幼稚園児では目の前に苦労せずに得られるご褒美があっても、頑張っ
て得られるご褒美をわざわ得る行動をとる。
でも、その傾向は大学生ぐらいになると50%にまで低下する。 労せず、楽して得られた方がいいという考えは人間だけなのかもしれません。 なので、鳥は違う!頑張って得られるご飯を求める!

5。フォレイジングの実際の動画

わかりやすいものとして、このフォージングボールですね。
ボールの中にシードなどご飯を入れます。ここに穴が空いていて、ボールが転がる と、その穴からシードが出てくる。
先程の説明にあった通り、「何度もボールを転がす」という頑張りで「ご飯を得る」
という結果を得ることができた。
他の例としては、二つ目の動画、こちらに挙げる動画を一緒にご覧ください。飼い主 さんからのご好意で動画を使わせていただきました。ありがとうございます。

補足

みなさん、どうでしたでしょうか?
フォレイジングは鳥らしい生活をする手段の一つなんですね。もう少し詳しくお伝えするなら、フォレイジングは環境エンリッチメントとい う考え方の大きな括りの中に含まれるもので、他にも、空間エンリッチメントとか、社会的エンリッチメントとかいろいろあります。環境エ ンリッチメントが整っていないことで、冒頭にお伝えした毛引きや自咬症など、ストレスを背景とした問題行動に発展してしまうリスクが高 くなってしまいます。
両生類、爬虫類も診察していますが、こういった問題行動を起こした症例に遭遇したことありません。鳥類、哺乳類などある程度、精神的な 活動もする動物に特有の病気なのかもしれません。
いぬやねこでも毛がなくなるまで過剰に自分の体を舐めていたり、フクロモモンガでも自咬症が問題になることがちょこちょこあり、その動 物本来の生活が再現できないことによるストレスが背景にあるのを実感することがあります。
この問題行動の背景はこれだけではなく、以前にお話しした社会化も関係しているとは思います。幼少期からの母親からの愛情不足や、他の 動物とのコミュニケーション不足など複雑に関係しているとは思いますが、ご飯を得る喜びは鳥の三大欲求の一つなので、それをフォレジン グによって満たしてあげることができれば報告にもあるように、ストレスを背景とした問題行動は減少させることができると思います。
フォレイジングを始めたい!という方、詳細は、また概要欄にURL貼っておきますので、石綿先生のセミナー等を受講されることをお勧めし ます。

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