インコとオウムの発情抑制

まさの森・動物病院で獣医師をしています、安田です。
コメントいつもありがとうございます。継続する励みになっています。色々いただいた質問に関しては、ライブ配信で無理なくお答えしていきたいと思っています。

私は年間約5000羽ほどの鳥さんを診療しています。 今日は皆さんからのコメントにもありました「インコとオウムの発情抑制」についてお話ししたいと思います。 鳥さんとの生活は発情と肥満との戦いでもあります。今回はその発情についてです。 発情が原因で起こる問題行動、色々あると思います。発情を繰り返した結果、起こってしまう病気で困っている方多いのではないでしょうか。 どのインコさん、オウムさんにも起こりうることです。 今日のお話を知っておくだけで、インコとオウム発情抑制の実際について少し理解が深まるとは思います。 卵が詰まったり、卵巣や卵管の病気を一度でも経験をされた方、発情に関連した問題行動で悩まれている方は是非とも最後までご覧ください。

なんで発情を抑制するの?自然なことでしょ!?

自然に起こる範囲、1年に一回程度なら問題ない!
けど、人工的な飼育環境下では、年がら年中発情する条件がととのってしま
っている→過度な発情
いろんな病気になってしまう!
例:メスでは・・・卵づまり(難産)、卵巣や卵管の病気、腹壁ヘルニア、骨 軟化症、攻撃的になる、など
例:オスでは・・・精巣腫瘍、疑似交尾行動のしすぎで擦過傷など 来院されるインコやオウムさんの約3割がこの繁殖関連の病気!

さらによくないことに・・・・

発情すると食欲も増える傾向にあるので肥満になりやすい!
ということは・・・この前の動画やりました肥満になるとどうなりました
か??
→肥満が原因で起こる病気、脂肪肝、糖尿病、動脈硬化、関節炎などになり
やすい。

発情を抑制するために知っておくこと

「発情」をするということは、「子育てができる条件」が整っている証拠! 逆に、その条件を無くしてしまえば、発情はしにくくなる。 その発情の条件とは、
1。性的対象となる相手(人、鳥、物)の存在 2。子育てできるだけの十分なご飯
3。温度や湿度 4。巣 5。光の周期

1。性的対象となる相手の存在

よくあるのは飼い主さんに発情しているパターン:声をかけたり、撫でたり、 嘴を撫でたり、ご飯を与えたりの行動は鳥にとって求愛の行動
同居のインコやオウムさんに発情しているパターンも多い。
意外かもしれませんが、鏡、ブランコや止まり木、人形に発情しているパター ンも多いです

2。子育てできるだけの十分なご飯

自分の生命維持に必要なご飯しかない時は、卵を産んでも子供に与えるだけ のご飯がないため、子供は育たない。したがって、卵を産むことはしない
自然界ではそれが可能なほど、植物や木の実が生い茂る季節にだけ発情する
人工的な飼育環境下では、いつでもその条件が整ってしまっている飼育方法
をとられている方が多い。
その為、一年中発情している。

3。温度や湿度

子育てに適した暖かい、水分の多い時期に繁殖するのでこの条件が整うと発
情しやすい
文鳥は湿度が高いと発情が抑制される傾向にある

4。巣の存在

みなさんが飼育されているインコやオウムは、巣に戻って生活を営むパターン ではなく、群れで生活し、止まり木にとまって寝ているパターン。
巣の存在は、繁殖を目的とした場所なので、巣や巣材(わら、細く切った新 聞紙、チップ、布など)があると発情しやすくなる
みなさんが想像する「巣」以外ににも、餌皿がちょうどいいサイズだとそこ
を巣と認識したり、飼い主さんの帽子の中とか、衣服の中とか、箪笥の裏
や、テレビボードの下など・・・鳥が巣と認識する場所があれば一緒!

5。光の周期

光の周期が6-8時間以上長くなると発情しやすくなる。(そういう刺激する ホルモンが出る)
文鳥は逆で10時間以上だと発情しにくくなる
他にもいくつか、発情の条件はあるけど、とりあえず一般的に押さえておきた いものとしてこの5つ。この発情の条件スイッチがオンになっていればなって いるほど、発情が誘発されることになる。

推奨する発情抑制の方法

結論:適正体重をキープする食事管理とフォレイジング(フォージング)!
適正体重はセキセイインコなら30-35g程度、オカメインコなら80ー85g程度、文鳥なら23-25g程度、など肥 満にならない程度の適正体重をキープできる食事量を与える。
フォレイジングは簡単にいうと、ご飯を探し求める行動のこと。性的対象にばかり意識がいって、発情を誘発する (される)行動に依存しすぎないようにするために、ご飯を食べる時間を1日の中で多く割いてもらうのが目的。
みなさんは愛情を注ぐためにインコやオウムをお迎えした方がほとんどだと思います。発情を抑制するために、無 視したり、触らなかったり、声かけしないというのは、これまで築いてきた信頼関係が崩れてしまうし、何より、 理由がわからず、そんな相手を裏切るような行動はショック以外のなにものでもありませんので、おすすめはして いません。(ほどほどにぐらいのニュアンス)
フォレイジングに関しては、それだけでお伝えするのには内容が多く時間がかかるので、また別の機会にお伝えし たいと思っていますが、どうしても早く知りたいという方は下記にURLを貼っておきますので、ご参考になさって ください。
それ以外の条件スイッチに関しては、無理のない範囲で整えてもらう。

薬物による発情抑制

それでも発情を繰り返す場合、こんな場合でホルモン剤の投与による発情抑
制を行います
1。過去に卵づまりなどの病気になったことがある、 2。卵巣や卵管の腫瘍になってしまった、 3。腹壁ヘルニアの進行抑制を目的に発情抑制

まとめ

発情抑制の目的:繁殖に関連した病気や問題行動の予防 発情のスイッチがあります。
1。性的対象となる相手(人、鳥、物)の存在
2。子育てできるだけの十分なご飯
3。温度や湿度
4。巣
5。光の周期
このスイッチを押さないことが発情抑制する方法となります。 しかしながら、いろいろあるスイッチの中で、推奨する発情抑制の方法としては

補足

発情抑制について、みなさんはどうでしたでしょうか?かなりいろんなパターンがあると言いますか、多様性のある発情に関するご質問いただきますし、今回、十 分にはお答えできなかったかもしれません。
それに関しては、また機会を作ってお答えできればと思っています。
犬や猫では一般的にされている、避妊手術や去勢手術はインコやオウムでは今なお現在も、安全にできる手術ではありません。
この手術ができれば解決される問題、病気はかなり多いと思います。3割に及ぶ繁殖関連の病気や肥満に関係する病気、発情に伴う問題行動の問題などです。これに 関しては、今後の技術の向上、研鑽を積んでいくしかないかもしれません、が現状は手術しないと危険ですっていう時しか手術は選択されません。
また、発情抑制の方法、私の推奨する方法をお伝えしましたが、おそらく、その先生によってもいろんな考え方があるのかなと思います。
病気の進行度合いや、そのこの状態によっては食事管理してフォレイジングして少しずつ・・・といった悠長なことを言ってられない場面もあります。
でも、これまでの環境をガラッと変えるのは反発することも多いので、理想はこういった形ではないかなという考えをお伝えしました。
インコやオウムが楽しく過ごせる環境というのを考えた時、「発情抑制のために好きなおもちゃ奪う!」とか「これまでの声かけも、なでなでもなし!!」など、 その楽しみを奪うことばかりでは何のために愛鳥をお迎えしたのかわかりません。逆の立場で考えた時、どうでしょうか?あなたがセキセイインコさんだとしてせ っかく信頼関係を築き、パートナーと認識した人や物や鳥がいる中で、急に理由もなく自分の生きがいや楽しみを奪う人が現れました。それでもあなたは楽しい毎 日を過ごすことができますか?人間はそれをされたとしても、それ以外に楽しみを見出す選択する自由がありますが、鳥かごの中の鳥は飼い主さんよって制限され た選択肢の中でしか選ぶことができません。そう考えた時、なるべくそのこの環境が楽しいものなるべく選べる環境にしてあげたい、私はそう思います。